大判例

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福岡地方裁判所 昭和47年(わ)34号・昭46年(わ)937号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(罪となるべき事実)

被告人は、<中略>

第六、福岡市天神一丁目五番三〇号所在の代用監獄である福岡県福岡警察署留置場に勾留されていたものであるが、昭和四六年一一月一五日午後一時一五分頃、右留置場の浴場において被告人らを入浴させるためその看守の職務に従事していた制服着用の福岡県巡査部長、看守係主任中村直(大正五年八月一日生)から風呂のガスの元栓を開けるように言いつけられるや、かねてから同巡査部長に対しては転房を依頼していたのに聞き入れてもらえなかつたので恨みを持つていたところから、これに腹をたて「何で俺がせにやいかんか」「貴様の仕事でないか」等と血相をかえて同巡査部長と押し問答を初め矢庭に同巡査部長をめがけて、アルミ製洗面器(昭和四七年押第二七号の符号一)を投げつけ、更に至近距離から同巡査部長の顔面に唾を吐きかけ「部長おまえは威張つている、官服を脱いで来い、承知せんぞ、やつてしもうぞ。」と怒号する等の暴行、脅迫を加え、もつて同巡査部長の前記職務の執行を妨害し

たものである。

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は本件事件における中村巡査部長の行為を具体的事実関係よりみれば刑法規範により保護するに値いする職務行為ということはできないから被告人の本件所為は公務執行妨害には該当しない旨の主張をするのでこれにつき判断する。

前掲第六の事実関係の各証拠を総合すると判示認定のとおり中村巡査部長が被告人にガスの元栓を開けるよう言いつけたのに対して被告人は今迄の不満も手伝い右言いつけに対して反抗的な反対をしたこと、中村巡査部長との間にしばらく口論を交わしたこと、その後本件犯行に及んだことがそれぞれ認められる。ところで弁護人は中村巡査部長が口論のいきさつから浴場の中へ一、二歩はいりかけた行為はガスの元栓を開けるとか、被告人を静止する目的での行為ではなく感情の発露としてかかる行動に出たものであり従つて中村巡査部長の右行為は公務の具体的な執行とはいえないとしているが右中村巡査部長は代用監獄の看守係主任をしているものであつて被疑者留置規則第一七条第一項によつて看守者はたえず留置場を見回り留置人の逃亡、罪証隠滅、自殺等の事故のないよう留置人の動静及び施設の異常の有無に注意を払わなければならないのであり、従つて看守者は留置人が入浴する場合においても監督し看守する客観的な権限があるのであつて(被疑者留置施行細則第二八条六号参照)、本件当時においても中村巡査部長は留置人の入浴の看守という客観的かつ具体的な職務を行つていたのであるから、同巡査部長の判示所為即ち右職務の執行に際し判示のとおり被告人にガス元栓を開くように指示するのも看守者の職務上取扱うべき事務の範囲内にあるというべきである。然るに本件被告人は口論の末とはいえ、右中村巡査部長に対して暴行を加えて同人のガスの元栓を開く事務及び入浴看守の事務を妨げたのであるから被告人の右の所為は右中村巡査部長の公務の具体的な執行を妨害したものというべく従つて弁護人の右の主張は独自の見解にすぎなく、とうていこれを採用することはできない。 (中谷敬吉)

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